夕方のチャイムは今日だけ長い
三月十一日の昼、窓口に来た老人は「夕方のチャイムを、最後まで鳴らしてくれ」とだけ言った。毎日四十八秒で止まるはずの音と、操作盤の付箋に残された「ボタンは離すな」…
三月十一日の昼、窓口に来た老人は「夕方のチャイムを、最後まで鳴らしてくれ」とだけ言った。毎日四十八秒で止まるはずの音と、操作盤の付箋に残された「ボタンは離すな」…
避難所の体育館に伸びた公衆電話の列。その一番うしろには、夕方だけ先頭へ割り込み、受話器を耳に当てても一言も話さない橋本さんがいた。僕はその声を、奥さんのものだと…
断水した町の体育館で、給水の列のいちばん後ろに、その人は青いポリタンクを二つ提げて立っていた。一世帯20リットルまでのはずだ。私は勝手に腹を立てていた。やがて列…