先生が一番に呼ぶ名
昭和六十年の冬、夜勤の病室で、衰えた恩師が出席をとる仕草を始めた。吃音だった僕の名を、先生は昔いつも、あいうえお順を飛ばして一番に呼んでくれた。透明だった少年を…
昭和六十年の冬、夜勤の病室で、衰えた恩師が出席をとる仕草を始めた。吃音だった僕の名を、先生は昔いつも、あいうえお順を飛ばして一番に呼んでくれた。透明だった少年を…
昭和の山あいの村で、熱に伏せた少年の枕元に座り、黙って五分を数え続けた恩師。三十年あまり後、記憶を失って入院してきた先生の脇に、看護師長になった私は古い体温計を…
四十一歳で逝った兄が遺したハーモニカ。紙片に書かれたURLを開くと、そこには兄の声が——病気を隠し続けた理由と、最後の約束が込められた感動の短編。…
点滴の針を怖がって泣いていた五歳の子が、うん分かった約束だよ、と言って自分から腕を出しました。外で遊ぶ約束だと、私はずっと思っていました。看護師がシーツを抱えて…
雨の県道で倒れた身元不明の女性の首に、錆びた留め金のペンダントが下がっていた。ピンセットでこじ開けた蓋の中の写真を、当直医の佐伯先生は知っていた。結婚式まであと…