愛してるって、もう一度言ってよ

公開日: ちょっと切ない話 | 恋愛

愛

大好きなあなたは、今も笑っているのでしょうか。

私が7歳のとき。
なぜか実の親元ではなく、おじいちゃんに引き取られました。

そこで出会ったのは、三人の男の子。

9歳で元気いっぱいのL。
12歳で大人びているけれど、少し天然なS。
仏頂面だけど、本当はとても優しいA。

三人とも親がいなくて、おじいちゃんが私と同じように引き取った子たちでした。

やがて私たちは、本当の兄弟のように、家族のように育ちました。

1年が経ったある日。
大人っぽいSが、急にいなくなりました。

おじいちゃんから「死んでしまった」と聞かされ、信じられず、ただ呆然としました。
めったに泣かなかったAが、大声を上げて泣いていました。

そして時が流れ、Aが17歳、Lが14歳、私が12歳になった頃。
Aと私は家を離れることになりました。

Aは学校に行っておらず、すでに働いていて、転勤するとのこと。
一人では家事もおぼつかないAを放っておけず、そして何より私がAを好きだったから、Lも快く送り出してくれました。

二人で暮らし始めると、Aも私を愛してくれました。
会社近くのマンションで、同僚たちも近所に住んでいて、毎日が楽しくて仕方なかった。

Aの会社の社長さんも近所で、私たちを実の子のように可愛がってくれました。
本当に幸せな日々でした。

15歳になった私は、16歳になったらAと結婚する約束をしていました。

ある日、会社の旅行で山へ行くことになり、たまたま遊びに来ていたLも一緒に誘われました。
Lはすぐに会社の人たちと打ち解け、笑顔が絶えない旅でした。

このまま、ずっと続けばいいと思っていました。

なのに。

どうして、あなたと社長さんはいないのですか。

山で土砂崩れが起きたとき、どうして私をかばったのですか。
社長さん、どうして私が落としたネックレスを探しに行ったのですか。

Aがくれた、大事な宝物だからといって、私は誰も失いたくなかったのに。

Aは最後まで、愚痴ひとつこぼさず、
「愛してる」「ありがとう」
それだけを言って、Lの目の前で逝ってしまった。

最期まで、本当に、バカなんだから。

しばらくして見つかった社長さんの手には、ちゃんとネックレスが握られていました。

結婚式では、社長さんに父の席に座ってほしいと伝えられてよかった。
Aを最期まで抱きしめていられて、よかった。

おじいちゃんとLに抱きしめられ、声を上げて泣きました。
理不尽な世界を、無力な自分を呪いました。

私は、一度は壊れました。

けれど会社の人やLたちに支えられ、少しずつ笑えるようになりました。

あの後、病院に行ったら、わかったのです。
私のお腹には、あなたと私の子どもがいました。
しかも双子。女の子と男の子。

なんで、この子たちを抱きしめてあげられないのですか。
本当に、バカですね。

私は、あなたのところに行く日まで、ずっと悪態をつき続けるでしょう。
毎日、毎日。

だから——。

悪態をつかれたくなかったら、もう一度言ってください。
夢の中でもいいから、「愛してる」って。

大好きなあなたは、今も笑っていますか。

もし笑っているなら、その笑顔を見せてください。
そして、ついでに、私の悪態にも笑ってください。

関連記事

花(フリー写真)

綺麗なお弁当

遠足の日、お昼ご飯の時間になり、担任の先生が子供たちの様子を見回って歩いていた時のことです。 向こうの方でとても鮮やかなものが目に入って来ました。 何だろうと思い近寄って見…

たんぽぽを持つ手(フリー写真)

あした

私の甥っ子は、母親である妹が病気で入院した時に、暫くパパママと離れて実家の父母の家に預けられていました。 「ままがびょうきだから、おとまりさせてね」 と言いながら、小さな体…

花

未読のメッセージ

青春の嵐が吹き荒れる中学三年生の春、突然の母の病気の診断を受け入れることができませんでした。 試験と部活動に明け暮れる日々に追われ、未来への不安と金銭的な心配に頭がいっぱいでし…

手を握る(フリー写真)

仲直り

金持ちで顔もまあまあ。 何より明るくて突っ込みが上手く、ボケた方が 「俺、笑いの才能あるんじゃね」 と勘違いするほど(笑)。 彼の周りには常に笑いが絶えなかった…

廊下

涙の中の絆

僕は小さい頃、両親に捨てられ、孤独な日々を過ごしていた。 「施設の子」「いつも同じ服を着た乞食」という言葉が常に僕を追いかけた。 同級生と遊びたくても、その家の親に拒まれ…

水族館

忘れられない君への手紙

あなたは本当に、俺を困らせたよね。 あの日、バスの中でいきなり大声で「付き合ってください!」って言った時から、もう、困ったもんだ。 みんなの視線が痛かったよ。 初デ…

桜(フリー写真)

地元の友だち

話は遡ること3年前。 桜が開花し始めた頃、俺は自殺を考えていた。 大した理由ではないが、失恋、借金や勤めていた会社が倒産した事が重なり、全てに失望していた。 コミュニ…

お弁当(フリー写真)

母ちゃんの弁当

中学1年生くらいの時は反抗期で、ちょっとツッパっていたりした。 「親の作った弁当なんかダサくて食えるか。金よこせよ、コンビニで買うから!」 と母ちゃんに言ったことがあってさ…

夫婦の手(フリー写真)

空席に座る子

旦那の上司の話です。亡くなったお子さんの話だそうです。 主人の上司のA課長は、病気で子供を失いました。 当時5歳。幼稚園で言えば、年中さんですね。 原因は判りません…

手を組む女性(フリー写真)

恋人からの手紙

昨日、恋人が死んじゃったんです。病気で。 そしたらなんか通夜が終わって、病院に置いて来た荷物とか改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛ての手紙が入ってたんです。 で、よく…