母の弁当箱
毎朝四時、台所に置かれた弁当箱。団地で母とふたり暮らしの配達員が、二十四年間当たり前だと思っていたものの重さに気づいた朝の物語。…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
毎朝四時、台所に置かれた弁当箱。団地で母とふたり暮らしの配達員が、二十四年間当たり前だと思っていたものの重さに気づいた朝の物語。…
図書館司書の桜は、亡くなった元彼の部屋で古いカセットテープを見つけた。「桜へ」と書かれたテープは10本。毎年誕生日の前夜に録音された、届かなかった声だった。…
押し入れから出てきた古い地図には、赤ペンで七つの丸印がついていた。それはすべて、私と関係のある場所だった。母は毎年、私の誕生日に一人でその道を歩いていたという。…
3年ぶりに帰省した孫が、祖母の指に50年間輝き続ける銀の指輪を見つけた。祖父が5年かけて贈った指輪に込められた無口な愛情と、老いていく祖母の姿に、失われた時間の…
十七年前、文化祭で落としたカーディガンのボタン。拾ってくれた隣の席の彼は、返さないまま卒業した。薬剤師になった私の前に、あの日のボタンが届くまでの物語。…
左官職人の夫と無口な妻。三十年間毎朝使い続けた湯呑みの底に、妻が結婚当初に刻んだ小さな五文字を発見する。言葉にできなかった夫婦の想いを描く、心に染みる物語。…
三年間帰らなかった実家。電話口の「大丈夫」を信じたふりをしていた俺と、膝の痛みを隠していた母。軒先の干し花が教えてくれた、不器用な親子の本当の距離の話。…
港町の惣菜屋で働く母の割烹着が恥ずかしかった。東京で花屋を開いた息子が十年ぶりに帰郷して見つけたのは、母が裏庭でひっそり育てていた息子と同じ花だった——心が震え…
温泉街で偶然見つけた懐かしい楽器店。二十年の時を隔てて、あのジャズの音が再び鳴っていた。…
不治の病で5歳の息子を亡くした夫婦が、生前の約束を果たすため遊園地を訪れる。空の椅子に感じた小さな温もりが、二人に再び生きる力を与えてくれた。…
夜勤タクシー運転手として三十年。退職の日、妻が描いた古い地図を見つけた。赤い丸は二人で行った場所、青い丸はいつか行きたい場所。青い丸は一つも叶っていなかった。…
八年前に決裂した兄弟が、湖畔のペンションで偶然の再会を果たす。父の古いダッフルコートと、欠けたトグルボタンが繋ぐ、不器用な兄弟の物語。…
美大志望だった兄が絵日記をやめた理由。薬剤師の弟が十五年ぶりに兄の薬局を訪れ、壁の水彩画と最後のページが教えてくれた真実に涙する、兄弟の和解の物語。…
温泉街の駅員として働く俺のもとに届いた忘れ物。中には折り鶴と、十五年間音信不通だった幼馴染からのメモが入っていた。不器用な二人が最後に交わした言葉とは。…
亡き祖父の花屋を継いだ孫娘が、倉庫で見つけた編みかけのマフラーと日記。不器用な祖父が二十五年間綴り続けた想いに、涙が止まらなくなる。…