ばあちゃんの真空管
認知症で僕の名前を忘れた祖母。それでも深夜のAMラジオから僕の声が流れた瞬間、彼女は『ホタくん、また喋ってる』と呟いた──真空管ラジオが繋いだ最後の言葉を綴る、…
認知症で僕の名前を忘れた祖母。それでも深夜のAMラジオから僕の声が流れた瞬間、彼女は『ホタくん、また喋ってる』と呟いた──真空管ラジオが繋いだ最後の言葉を綴る、…
認知症で孫の名前も忘れた祖父。ボランティアで髪を切る孫の手に、祖父の指が重なり正しいハサミの角度を教えた。六十年の技が体に刻まれていた、理容師の祖父と孫の物語。…
母は毎年、梅雨が明けると麦茶を製氷皿で凍らせていた。薄まらんように、と。脳の病で手が震えるようになっても、その習慣だけはやめなかった。私はある朝、その製氷皿を落…
若年性の認知症になった恋人に、渡せずにいたエメラルドの指輪。一年後、北陸の海辺で再会した二人の二時間と、彼女が呟いた世界一遠くて近い場所という言葉の意味を、静か…
祖母の遺品の缶から、一本の木の枝が出てきました。村に伝わる背負い坂の言い伝えと、施設へ向かう車の窓から痩せた腕を伸ばし続けた祖母。親が最後まで口にしなかったこと…
福井の越前和紙を漉く家の話です。祖父が倒れた雪の夜、高校二年の僕は祖母をお手洗いへ連れて行き、礼にと三千円を差し出されて断りました。その三千円が、祖母が一年に一…