来ない流氷を告げた朝
昭和のオホーツク沿岸。漁業無線局の見習い通信士だった俺は、顔も知らないまま声だけで知り合った娘に、見栄の嘘ばかりついていた。流氷が好きだと言い合った三年半の終わ…
昭和のオホーツク沿岸。漁業無線局の見習い通信士だった俺は、顔も知らないまま声だけで知り合った娘に、見栄の嘘ばかりついていた。流氷が好きだと言い合った三年半の終わ…
十一年口をきかなかった兄の漁師小屋で、弟が見つけたのは三十年分の魚拓帳だった。空白のページに繰り返される『静夫、来ず』──たった四文字に込められた、不器用な兄の…
北海道の漁村で写真を撮り続けた兄が旅立った。荷物を引き取りに行った二月の部屋で、押し入れの奥から黒い表紙の兄の手帳が出てきた。毎年三月十四日にだけ、撮影記録のな…
中学三年の十月、担任が朝の会で一人の名前を大声で呼びました。その日の昼から、からかいは止みました。二十年後、先生の出席簿の正の字を見せられて、僕はあの朝が偶然で…
北海道・増毛の造り酒屋で冬だけ働いていたあなたと別れて、七年が経ちました。坂の途中の電柱で必ず一度だけ立ち止まっていた理由と、あの別れの言葉を誰から引き取ったの…