一枚の敷石だけ乾いている
二十年前の雨の夜、団地の公園で八時間立ち続けた少年がいました。靴の先は、ほかより一枚だけ低い敷石にきっちり収まっていたのです。二十年後に同じ場所へ行くと、その一…
二十年前の雨の夜、団地の公園で八時間立ち続けた少年がいました。靴の先は、ほかより一枚だけ低い敷石にきっちり収まっていたのです。二十年後に同じ場所へ行くと、その一…
高校一年の秋から、私の上履きの向きはいつも揃っていました。踵を外に向けて、左右が同じ角度で並んでいる。自分で揃えた覚えはありません。同じ高校に通う幼馴染が階段か…
体育のあとの教室で、机の上に切り裂かれた文庫本が置かれていました。いじめのことを、私は母に言えませんでした。友達のいない私に、母が月に一冊だけ本を買ってくれる人…
山口・下関の路線バスを二十六年運転した男性の話です。毎朝同じ便に乗る女子高生が、料金箱の前で必ず小銭を二度に分けて入れていました。その三秒が誰のために使われてい…
大阪から雪国の高校へ移った二年生の冬、私は訛りを笑われて口を閉じました。渡り廊下の隅で泣いていた私に声をかけたのは、いつも古いカメラを持つ七海さんです。フィルム…