継母が土佐の言葉で笑った日
顔合わせの席で、継母が婚約者の祖母と土佐の言葉で笑い合った。少し高くて語尾の跳ねる、私の知らない声だった。12歳の春に「この家で、そのしゃべり方しないで」と言っ…
顔合わせの席で、継母が婚約者の祖母と土佐の言葉で笑い合った。少し高くて語尾の跳ねる、私の知らない声だった。12歳の春に「この家で、そのしゃべり方しないで」と言っ…
深夜三時半に出庫する塵芥収集車。先輩運転手の松原は、ある県営住宅の前で毎朝一分だけ圧縮レバーを切る。朝四時の圧縮音が止まる理由を、語り手は二年間訊けなかった。仕…
室井の補修跡は、いつも指二本ぶん左へ伸びていた。材料の無駄だと10年言い続けて、俺は一度も謝らないまま同期を見送った。一人で直した去年の穴は、春にぜんぶ左から割…
二年ぶりに帰省した私は、土間で父が黙々と革靴を磨いているのを見た。それは二年前に私が置いていった靴だった。父がずっと磨き続けていたと知ったとき、胸の奥が静かに震…