母が最後まで蒔かなかった種
岐阜・郡上八幡の水路沿いにある小さな花屋を継いだ娘が、母の引き出しから見つけた四十粒のヤグルマギクの種の話です。二十年ぶんの発芽検査の記録と、九月の誕生日のたび…
岐阜・郡上八幡の水路沿いにある小さな花屋を継いだ娘が、母の引き出しから見つけた四十粒のヤグルマギクの種の話です。二十年ぶんの発芽検査の記録と、九月の誕生日のたび…
父の作業台の抽斗には、売り物にしない蝋細工の膳が、年にひとつずつ増えていた。失敗作だと聞かされていたので、抽斗を開けたのは十三回忌の今日が初めてだ。十七の膳に書…
寂しいときや困ったときだけ、私は決まって良い香りに包まれました。二十歳の夏、取り壊しの決まった蔵で一番奥の桐の長持を開けると、同じ香りが顔を包んだのです。着物の…