第二次大戦が終わり、私は復員した日本の兵士の家族たちへの通知業務に就いていました。暑い日の出来事です。毎日、痩せ衰えた留守家族たちに彼らの愛する人々の死を伝える、とても苦しい仕事でした。
ある日、私の机の前に小さな少女が立っていました。彼女は小学校二年生で、フィリピンに行った父親のことを尋ねてきました。彼女は、病弱な祖父母と共に生活しており、彼らのために父親の消息を確かめにきたのでした。私は帳簿を調べ、彼女の父親がルソンのバギオで戦死したことを確認しました。
「あなたのお父さんは…」と言いかけた時、私は少女の痩せた、真っ黒な顔と伸びたオカッパの下の切れ長の目を見ました。彼女の眼は私の口を見つめ、私は彼女に答えなければならないと感じました。しかし声が続かず、「あなたのお父さんは、戦死しておられるのです」と伝えました。
その瞬間、少女は一杯に開いた眼を更に大きく開き、涙を堪えていました。私の目からは涙が溢れ始め、声を上げて泣きたくなりましたが、少女は泣かず、おじいちゃんから頼まれた父親の戦死した状況を書いてもらうように頼みました。私は涙を堪えて、必要な書類を書きました。
少女は涙を一滴も落とさず、私の顔を見つめながら、おじいちゃんから泣いてはいけないと言われていること、電車で帰れることを話しました。彼女は妹が二人いて、母親も亡くなっていると言い、自分がしっかりしなければならないと強く語りました。
彼女の言葉は私の心に深く刻まれ、彼女の小さな勇気と決意に心を打たれました。少女は泣かずに強く生きることを選んだのです。