二十歳でヨーロッパに旅をした時の実話をいっちょう。
ルフトハンザの国内線に乗ってフランクフルト上空に居た時、隣に座っていたアメリカ人のじい様に話し掛けられた。
日本は良い国だ、なんて世間話をしていると、
「私は昔、ここの空を飛んだことがある」
とじい様がポツリと言うので、あなたは飛行機を操縦出来るのかと聞いた。
実はじい様は、戦争の時に爆撃機のクルーで、フランクフルトを爆撃しに来たことがあるそうな。
それを話したことで、じい様は何を思い出したのかしょんぼりして、
「平和は一番大事なことだ。日本人の君は、それが解るだろう」
と言った。
俺はただ頷いたが、若いのもあって、消沈したじい様が隣に座っているのが嫌だと思ってしまった。
そこでじい様、雲海を見ながら一言。
「きっと天国では、アメリカもイギリスも日本もドイツも、みんな仲良く飛んでいるよ」
今になって思い出すと、ほろっと来るエピソード。
じい様はあの雲海の中に、沢山の国の飛行機が仲良く飛んでいる光景を想像したのでしょう。
俺はそれ以来、映画の『メンフィス・ベル』を観ると、いつも少し泣きます。