泣ける話や感動の実話、号泣するストーリーまとめ – ラクリマ

本当に幸運な猫

キジトラ猫(フリー写真)

私は長らく務めた泉南市役所を退職した後、令和3年4月から泉南市りんくう体育館の管理人として勤めていました。

その時のお話をさせていただきます。

まだ勤め始めで戸惑うことが多く、ようやく少しずつ慣れてきた頃、ある出来事が起こりました。

この施設には、避難所を体育館施設として使っている部分があり、多くの方にご利用いただいております。

9月17日の雨の降る朝、利用者の方から

「床下から猫の鳴き声がする。どうにかならないか」

とのお話がありました。

現場を見ると、確かに猫の、しかも仔猫らしき鳴き声が聞こえてくるのです。

設計図面を見ると、どうやら体育館の床下ではなく、隣の倉庫にある通風口から伝わってきていると判りました。

倉庫を確認したところ、床下への点検口があるのですが、元々ここは避難施設。荷物用フォークリフトがその点検口を塞いでいるのです。

私はフォークリフトの操作など解りませんし、当然免許も持っておりません。

床下に潜ることもできず、段々と弱くなって行く鳴き声を聞きながら、

『このままでは死んでしまう。何とかしたい』

という歯がゆい気持ちでいっぱいになりました。

事務所に戻り試案する中、目についたのがデスクの前に貼っていた連絡表に記載の泉州南消防組合の電話番号でした。

藁にもすがる思いで電話をし、事情を説明しました。

初めは驚いていた受付の方に、

「何とか助けていただけないか」

とお伝えしたところ来ていただけることになり、目の前がぱーっと明るくなりました。

待つこと30分ばかり、何と3名もの隊員の方がレスキュー車で来てくださったのです。

すぐに作業に取り掛かっていただき、フォークリフトを移動して、二人がかりで重いコンクリートの点検口を上げました。

そして床下に潜り込み、泥々に汚れながら仔猫を助けていただきました。

雨と泥に濡れ、がりがりで今にも死にそうなキジトラの仔猫でした。

おそらく前日の夜に迷い込み、濡れた体で暗い中、二日近く泣いていたのでしょう。

あのままだと力足きて死んでいたと思います。

隊員の皆様が来てくださらなかったら、救えなかった命です。

仔猫の命と人の命を天秤にかけることはできません。

命の隔てなく救うという行動そのものに感動を覚えました。

最後に笑顔で「良かったです」と言っていただき、このような方々が私たちの生活を守ってくださることに尊敬の気持ちを抱いております。

市民としても本当に安心して生活できます。

一生懸命に救っていただいた仔猫は、あれから私の家で保護しました。

尻尾が丸いので『まる』と名付けました。

保護した時から1年近く経った今、体は5倍程の大きさになりました。

先に里親となった犬と保護した猫と3人一緒になって、元気いっぱい家の中を走り回っております。

現在、私は別の職場に行って勤務しております。

今から思えば、まるを助けるためにりんくう体育館に勤務したのかもしれません。

そう考えると、本当に幸運な猫だったと思います。

今や我が家にとってなくてはならない家族です。

消防隊員の皆様には感謝でいっぱいです。

そして、いつも癒してくれるまるにも感謝でいっぱいです。

投稿者: 岡坂様

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