中学卒業が間近に迫ったある日のことです。
今までお世話になった人に手紙を書きましょう、という授業がありました。
みんなは友人や部活の顧問宛に一生懸命、手紙を書いていました。
自分は最初『今どき手紙かぁ』と思い馬鹿にしていたけど、何となく書かなければいけないような気がしました。
そして半年前に亡くなったおじいちゃん宛に手紙を書きました。
まあ、届くはずはないのだけれど。
※
最期の時、意識がなく寝たきりだったおじいちゃんに伝え切れなかった感謝の気持ち。
そして高校の制服姿を見せたかった気持ち。
それらの気持ちを手紙にありったけ込めて、僕はおばあちゃんの家へ向かいました。
普段からあまり顔も見せないのに、おばあちゃんは笑顔で迎え入れてくれました。
僕は奥の方の部屋にある仏壇にそっと手紙を置き、手を合わせてその日は帰りました。
※
それから数日が経ち、おばあちゃんが珍しく家まで俺を訪ねて来ました。
「○○ちゃん、おじいちゃんから返事が来たで」
さらっと言うものだから、とても驚きました。
取り敢えず手紙を受け取り、おばあちゃんが帰った夜、おそるおそる読んでみました。
便箋は二枚でした。内容は、
『僕の身を案じている』
『僕のじいちゃんへの感謝は日頃から伝わっていた』
『○○の制服姿は誰よりも格好良かった』
『枕元で一生懸命、色々な話をしてくれたのに、返事もしてあげられなくてすまない』
二枚目を見ると、
『お前の夢は叶う』
と大きく書かれていた。
追伸には、
『おばあちゃんに代筆を頼みました』
と震えた字で記されていました。
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その手紙は本当におじいちゃんが書いたのか、それともおばあちゃんが書いたのかは分かりません。
しかしそんなことは関係なく、その日は涙が止まりませんでした。