11年間、飼っていた愛犬が亡くなった。
死ぬ前の半年間、自分はろくに家に帰らず、世話も殆どしなかった。
その間にどんどん衰えて行っていたのに、あまり見ることも触ることもなく、その日を迎えてしまった。
前日の夜に、もう私とはあまり会話が無くなっていた母が、兄と一緒に私の部屋に来て
「もう、動かなくなって、息だけしてるの。目も、開いたまま閉じられない。最後だから、お別れして来なさい」
と泣きながら言ってきた。
驚いて下に降りて行ったら、コタツに横たわっていた。
本当に息だけしかしておらず、段々息も弱くなっているのが解った。
怒りっぽい犬で、触るだけで唸るのに、その日は何も反応が無かった。
母と兄と三人で、泣きながら朝まで見守った。
※
次の日、単身赴任の父が帰って来てすぐ息を引き取った。
父のことが大好きだったから、きっと待っていたのだと思う。
家族全員揃うのを待っていたんだな。
死ぬ間際に飲んだ水は凄く美味しかったよね。幸せだったよね。
何よりも、ろくに家に帰らず遊んでばかりいて、あなたの世話をしていなかったことを悔やんでいる。
父も母も兄も泣きじゃくる中、あたしは後悔ばかりが心に残って、あまり泣くことも出来なかった。
※
おまえが死んでから、おかあさんとも会話するようになったよ。
今まで、お母さんの話し相手はおまえだったもんね。
おまえのお陰で、自分がどんなに親を悲しませていたかが解った。
犬にまであたしのことを相談するくらい、おかあさん悩んでいたんだね。
おまえが死んでふさぎがちだった母も最近元気になったよ。安心して眠ってね。
昨日、死んでから初めてあなたの夢を見ました。朝起きて、泣きました。
本当にありがとう。
ばいばい。