あの日、俺は彼女と些細な事でケンカをしていた。
お互い険悪な状態のまま、彼女は車で仕事へ行った。
俺は友達に会い、彼女の愚痴を言いまくっていた。
そして彼女の仕事が終わる頃にメールを送った。
相変わらず内容は、ああでもないこうでもないと、くだらない遣り取りだった。
そのうち彼女から返信が来なくなったが、ケンカ中だったので気にも留めなかった。
※
1時間ほど経つと、彼女の携帯から電話が掛かって来た。
俺はわざと面倒くさそうに出た。
「はい」
そしたら受話器の向こうからは、彼女ではなく別の女の人の声で
「あんたのせいだ!!
あんたが殺した!」
と、凄い勢いで怒鳴っていた。
俺が訳も解らず戸惑っていると、今度は落ち着いた男の人に代わった。
彼女は車で電柱に正面から突っ込み、死んだと言う。
「恐らく運転中のメールが原因の、不注意による事故でしょう」
電話の向こうで、警官だと思われる落ち着いた男の人がそう言っていた。
※
放心したまま電話を切ると、俺の携帯が1件のメールを受信しました。
それは、事故直前の彼女からのメールでした。
「何か意地張っちゃってごめんね」
俺は彼女のご両親からひどく避けられ、お葬式にも顔を出させてもらえなかった。
まだ彼女に…、
「俺の方こそごめん」
と、返信出来ていないんだ。
そう言いたかった。
ごめんって言いたかった。
そして本当なら、今もずっと一緒に居たかった…。