私がその先生に出会ったのは中学一年生の夏でした。
先生は塾の英語の担当教師でした。
とても元気で、毎回楽しい授業をしてくれました。
そんな先生の事が私はとても大好きでした。
その頃、私は友人から嫌がらせを受けたり、家族関係が上手くいかなかったりと悩んでいました。
嫌がらせは学校だけに留まらず、塾や、放課後、色々なところでされました。
私はとても精神的にダメージを受けていて、死にたいとすら思っていました。
でも、怖くて周りには相談できませんでした。
※
そんなある日、授業後に先生は落ち込んでいる私を呼び、こう言いました。
「最近元気ないけど、何かあったのか?
見ていて薄々気付いてはいるけど、言える範囲でいいから言ってみて?」
あんなに元気な先生からは到底考えられない優しい声でそう言ってくれました。
そして私は『この人なら私を支えてくれる』そう思い、今まであったことを全て相談しました。
感情的になり過ぎて泣いてしまうこともありました。
その時も先生は、
「ゆっくりで良い、焦ると上手くいかなくてもっと辛くなる。俺はお前が笑顔でいる事が第一だと思ってるからな」
そう言ってくれました。
そして先生は毎週私の話を聞いてくれました。
そんなある日、先生は私にこう告げました。
「後3週間で俺は講師を辞めて、地元の大阪へ帰る。もっと側にいてやりたかったけど、ごめんな」
その瞬間、私は頭が真っ白になりました。
悲しくて何回も泣きました。
※
そして最後の日、私は
「私は先生に出会えて良かった。今までありがとう。先生がいないとどうしたらいいか分からないけど、自分らしく進めるように頑張る」
そう誓いました。
それを聞いて先生は、ほっとしたような、少し寂しそうな顔でこう言いました。
「俺もお前と一緒だったんだ。家族関係も悪くて、友達にもいじめられてた。
そんな経験があるからこそ、同じ立場に立っているお前を助けられるような存在になりたかったんだ。
お前は出来る子だから辛くても、苦しくても乗り越えられるように頑張れよ?
いつかお前が笑顔で頑張ったよって報告してくれるのを、俺は何年先だろうと待ってるから」
そう言って涙を零しました。
元気な先生の最初で最後の涙でした。
みんなに元気に振舞っている先生もこんなに辛い思いをしていたんだ。そう思うと何だか頑張れる気がしたんです。
※
それから早三ヶ月…私は自分らしくがむしゃらに今を生きています。
先生がいなくなって寂しいけれど、辛い事も苦しい事も先生のおかげで乗り越えられています。
先生のくれた言葉や優しさは私の一生の宝物です。
そして、私はこれからも頑張り続けます。
「頑張ったね」
その一言が聞けるように…。