春一番が吹き荒れた日。
本当に物凄い強風で、その日は朝から店の看板が倒れたりトラブル続きで、ずっと落ち着かず疲れ切っていた。
そんな時、若いカップルのレジをしていると、彼氏の方が
「駐車場の段ボールが飛び散って迷惑なんですけど。あのままにしておいていいんですか?」
と少し怒りながら言って来た。こちらも疲れ切ってイライラしていたので、
「申し訳ございません。今すぐ片付けます」
と適当にその場を収め、嫌々強風の吹き荒れる外へ出て駐車場を見たら、見事に段ボールが一面に散らばり舞っていた。
片付けるにも、その最中も強風が吹き止むはずも無く、気の遠くなるような作業だった。
もうこのまま放って置けばどっか行くだろ…なんて思いながら掻き集めていたら、後ろから
「すみません、これ…」
と、さっきのカップルの彼女の方が、私より遥か多くの段ボールを抱えて立っていた。
くるくる綺麗に巻いた髪がボサボサになっていた。
ひらひらの綺麗なワンピースを着ているのに、汚い段ボールを胸いっぱいに抱えていた。
その後ろには彼氏が、段ボールを沢山抱えて立っていた。
自分がとても恥ずかしくなった。
申し訳ない気持ちで一杯になった。
カップルから段ボールを受け取り、深々とお辞儀をすることしか出来なかった。