ふと思い出したのだけど、亡くなってしまった子から絵葉書をもらったことがある。
中学生の時の隣のクラスの女の子で、病気で殆ど学校に来ないまま亡くなってしまった。
うちの学校は生徒数が少なかったので、体育や課外授業のバードウォッチングは2クラス合同でやることになっていた。
その課外授業の時、その女の子がまだ学校に来ることが出来た頃に、何度か一緒になるくらいだった。
※
一度だけ喋ったことがある。
寝坊して完全に遅刻だ…と思いながら、いつものバス停に歩いて行ったら、その子が停留所のベンチに座っていた。
田舎だから時間がズレるとバスが全然来なくて、暇だったので何となく話しかけたんだ。
「お前も寝坊したの?」
「…病院、寄って来たから」
俺はその時、病弱で殆ど学校に来ていない子が居るという話を思い出し、それがこの子だと気付いた。
その子はそれから一年ほどで亡くなってしまったので、今思えば本当に無神経なんだけど…。
俺は、
「へえ、どっか悪いの?」
と訊いてしまった。
彼女は少し笑って、
「うん、ちょっとね」
と言った。
彼女は、俺が中学に上がるまで新聞配達をしていたのを知っていて(彼女の家にも配達していたらしい)、
「前から思ってたけど、ほんとえらいよね」
とやけに褒めてくれた。
実はゲームソフト欲しさだったことは言わなかった。
バスが来て、学校に着くまで他愛も無い話をした。
天気が良いのにかったるいよなーとか、そんな内容のことだ。
彼女と話したのはそれが最初で最後だった。
※
中学校を卒業した後、絵葉書が届いた。
綺麗な夕焼けの空が写った絵葉書だった。
最初は誰か分からなかったけど、暫く考えて思い出した。
その少し前に、葬式があったと聞いていた子だった。
「朝焼けの写真だったら良かったのに。でも、夕焼けも綺麗でしょ?」
と書いてあった。
その下にスペースが余っていたから、もしかしたら他にも書こうとして止めてしまったのかもしれない。
書きかけのまま大切そうに閉まっておいた絵葉書を、家族の人が見つけて出してくれたのだそうだ。
新聞配達なんて朝は眠いし新聞は重いし、手が真っ黒になるけど朝焼けが気持ち良いと、カッコつけて話したのを思い出した。
その絵葉書は今も大事に閉まっている。