小学校高学年の時、優等生だった。
勉強もスポーツもできたし、児童会とか何かの代表はいつも役が回って来た。
確かに、良く言えば利発な子供だったと思う。
もう一人のできる男子と二人で、担任には愛され贔屓されていた。
でもそれを良いことに、みんなが私たちに面倒や責任を押しつける雰囲気もできていて、やだなあと思いつつ空気読んでこなす日々だった。
※
そんなある日、自作のお弁当を作って来て、皆の投票で優勝を決めようみたいな会が開かれた。
『どうせみんな親に手伝ってもらうのにくだらない』
と思いつつ、私は敢えて適当な弁当を考案した。
ハンバーグと冷凍ポテトと何か、みたいな。
制作時間も短めで済む内容。
優勝なんてどうでも良かった。
※
当日、親が全面的に支援したであろうみんなの弁当はそれぞれに美味しそうで、はっきり言って大差は無い内容だったと思う。
私は、Mちゃんの彩りや栄養がきちんとしていて、弁当にふさわしく手早く作っているお弁当に投票した。
結果は、優勝と準優勝は大差で、私ともう一人の優等生の二人。
本当に大差無かったのに。
結局みんないつもの通り、
『優等生を祭りあげておけばいい』
ということだったのだろう。
Mちゃんの弁当は、大した順位じゃなかった。
でも、私は知っていた。
目立たないけどいつもニコニコして、優しいMちゃんの家は、父子家庭だということを。
彼女の素敵なお弁当は、お姉ちゃんと一緒に日々家事をこなしている、本当に彼女自身が文字通り自作した弁当だということを。
みんなバカだ。
担任もバカだ。
なんで解らないのか。
…と無性に悔しかった。
グループが違うので普段はあまり話さなかったけど、Mちゃんに
「Mちゃんのお弁当に投票したんだよ」
と伝えた。
「ありがとう」
と笑ってくれた。
※
それから暫く経った運動会の日、離婚したMちゃんのお母さんを見た。
保育園時代にはよく会っていたからすぐ分かった。
お母さんは父兄席からずっと離れた校庭の隅に佇んで、一生懸命娘の姿を探していた。
仕事の合間に駆け付けた様子で、自転車のカゴにお弁当は無かった。
何故か今でもその光景が目に焼き付いて離れない。