小学6年生の時の事。
親友と一緒に先生の資料整理の手伝いをしていた時、親友が
「あっ」
と小さく叫んだのでそちらを見たら、名簿の私の名前の後ろに『養女』と書いてあった。
その時まで実の両親だと思っていたので、心の底から衝撃を受けた。
※
帰り道、どんな顔で家に帰って良いか分からず、私は公園のブランコに座ったまま立てなくなっていた。
親友はずっと付き添ってくれて、
「よし、じゃあ私と姉妹の盃を交そう」
と言い、カバンからメロンアイスの容器(メロンの形のやつ)を取り出し、水道の水を汲んで飲んだ。
一体何のテレビを見たのか、
「盃の契りは、血の繋がりより強いんだよっ」
なんてメロンのカップ片手に言う親友がおかしくて、思わず泣きながら笑い合った。
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十数年経って私が結婚する事になり、結婚直前に二人でお酒を飲む事にした。
『あの時はありがとう』と言って驚かせようと思い、あの時に貰ったメロンのカップをカバンにこっそり忍ばせて飲んでいたら、突然親友がポロポロ泣き出して
「あの時、あの時、気付かせてしまってごめんね」
と言った。『養女』の文字を隠さなかった事を、ずっとずっと悔やんでいたと泣いた。
そんな事、反抗期に親に反発しそうな時も、進学の学費面で親に言えなくて悩んだ時も、机の上でメロンのカップが見守っていてくれたから、あなたが居てくれたからやって来られたんだと伝えたかったのに…。
ダーダー涙を流しながら、ドラえもんのようなだみ声で
「ごれ゛ぇ~」
とメロンのカップを出すしか出来なかった。
親友もダーダー涙を流しながら、
「あ゛~ぞれ゛ぇ!」
と言い、お互い笑って泣いて、酒を酌んだ。
もちろんメロンのカップで。
もうすぐ親友の結婚式があるので思い出した。