友達が自殺した。
理由はよくある『虐め』。
俺は気付いていた。
友達が虐められてたことには気付いていた。
でも自分までそうなるのが嫌だったから、最後は他人の振りまでした。
まさか自殺をするとは思っていなかった。
ショックだった。
でも俺だってあいつを虐めたようなものだから、何も言えなかった。
ただ、ずっと後悔するしかなかった。
※
そしたらある日、友達の母親に呼ばれた。
「貴方は息子が虐められたの知ってたの?」
そう聞かれて、ただ
「はい」
と答えた。
『怒られるかな』と思った。
でも何故か、友達の母親は何も言わずに手紙を差し出して来た。
あいつが俺宛に書いたものだった。
俺への恨みでも書いてあるのか、と思った。
※
○○へ
こんな形で別れてしまってごめん。
虐められていた間のことについては、かなり怒ってる。
でも、誰だってああしたくなるよな。
だから、後悔するなよ。
俺のことをお前が庇ったら、お前まで虐められるだろ?
だからこれで良かったんだ。
お前は俺みたいにはなるなよ。
俺はもう死ぬけど、お前には生きていて欲しい。
男同士で気持ち悪いかもしれねえけど、何だかんだで俺はお前のこと好きだったからさ。
あ、もちろん、友達としてだぞ?
まあ、とにかく、俺はお前のことは恨んでねえから。
じゃあな。
※
恐らく死ぬ前に書かれたであろう手紙は、所々濡れていて文字がぼやけていた。
あいつがどんな気持ちでこれを書いたのかは分からない。
でも『もう二度と会えないんだな』『笑ってくれないんだ』という思いが込み上げて来て。
思い切り泣いた。その場に崩れ落ちるような感じで。
そしたら、あいつの母親が
「私ね、あの子が虐められてること知らなかったのよ。
だって、あの子ったら、家でもあなたの話ばかりしてるのよ?
でも、それも嘘だったのね。
…でも、気付いてあげられなかった私も悪いから、私に貴方を叱る権利はない。
息子の友達になってくれてありがとう」
そう言って泣き出すんだよ。
※
あの時の気持ちは、今でも忘れられない。
『ごめんな、俺、助けてやれなかった。
だからこそ、これからはお前の分もしっかり生きるよ』
現在、俺はスクールカウンセラーとして働いています。