うちの3才の娘は難聴。殆ど聞こえない。
その事実を知らされた時は嫁と泣いた。何度も泣いた。
難聴と知らされた日から、娘が今までとは違う生き物に見えた。
嫁は自分を責めて、俺も自分を責めて、周りの健康な赤ん坊を産むことが出来た友人を妬んだ。
どん底だった。
馬鹿みたいにプライドが高かった俺は、周りの友人達に娘が難聴だと知られるのが嫌だった。
何もかもが嫌になった。
嫁と娘と三人で死のうなどと毎晩考えていた。
※
ある晩、嫁が俺に向かってやたらと手を動かして見せた。
頭がおかしくなったのだろうかと思っていたら、喋りながらゆっくり手を動かし始めた。
「大好き、愛してる。だから一緒に頑張ろう」
手話だった。
その時の嫁の手、この世のものではないと思うほど綺麗だった。
それで目が覚めた。何日もまともに娘の顔を見ていないことにもやっと気付いた。
娘は眠っていたが、俺が声を掛けるとにっこり笑った。
あれから三年。
娘の小さな可愛い手は上手に動いている。喋っている。