三年前に死んだ祖父は、末期癌になっても一切治療を拒み、医者や看護婦が顔を歪めるほどの苦痛に耐えながら死んだ。
体中に癌が転移し、せめて痛みを和らげる治療(非延命)をと、息子(父)や娘たち(伯母)が懇願しても、絶対に首を縦に振らなかった。
※
葬式の後、親しかったご近所の将棋仲間が家族に宛てた祖父の手紙を渡してくれた。祖父が生前用意していた物だそうだ。
手紙の中には、自分が家族を悲しませ苦しませるのを承知で、苦しみながら死んだ理由が書かれていた。
※
20年近く前、孫の一人が生存率20%を切る難病で闘病していた時、祖父は神様に誓ったのだそうだ。
自分は今後、どんな病気や怪我になろうとも、絶対に医者にもかからないし薬も飲まない。だから孫を助けてくれと願を掛けたのだそうだ。
幸いその孫は無事手術も成功し、成長して成人もした。孫の成長を見届けることが出来たのだから、もう思い残すことは無い。
後は神様との約束を果たすだけだ。だから家族は悲しまないで欲しい。自分は満足して一生を終えるのだから。
※
手紙にはそう綴られていた。
孫は当時一歳にもならない赤ん坊で、病気だったことも覚えていない。
祖父は自分の決意を貫いて一生を終えた。
その孫である兄は葬儀でわんわん泣いていた。
もちろん、兄弟もみな泣いた。
※
うまく書けないのが悔しいなあ。本当に祖父は凄い人だったんだよ。