泣ける話や感動の実話、号泣するストーリーまとめ – ラクリマ

お父さんよりいい男

結婚式の花嫁さん(フリー写真)

私の小さい頃の夢は、お父さんのお嫁さんになることでした。

お父さんに対して、嫌いと思ったことも嫌だと思ったこともありませんでした。

周りの友達よりもお父さんとは仲良しだったと思います。

でも高校3年生になり、進学について悩んでいた時、私は地元を離れて県外への学校に行きたいと考え、お父さんとお母さんに相談をしました。

お母さんはいつも私に対して反対をしたことが無い人なので、

「自分が後悔しないようにやりたいことをやりなさい。お母さんは応援するよ。頑張れ」

そう言ってくれました。

でもお父さんは大反対。

「県外に行かんでも、同じような学校は地元にある!!そこに通いなさい!!」

初めてお父さんと喧嘩をしました。

私は聞き分けのないお父さんに内緒で、お母さんと二人で入試に向け準備をしました。

受かったことも言わず、引っ越しをすることも言わず。

全ての準備を終わらせてからお父さんに伝えました。

私「来月引っ越しするから」

父「知らん。勝手にしろ」

出発日、お父さんの姿はもちろん無く、お母さんだけが見送りに来てくれました。

地元から離れ学校生活が始まった頃、お母さんから電話で話があると言われました。

実はお父さんは私が高校入学前から病気で、ずっと病院に通っていたこと。

それをお父さんに口止めされていたこと。

そして…今度手術を控えていること。

反対を押し切って進学し、頑張っている私の邪魔をしたくないと言っていたこと。

お母さんは、私と進学の準備をしていたことを、お父さんにこっそり伝えていました。

見送りの時、実はお父さんも内緒で来ていて、遠くから見ていたこと。

「帰って来てあげて」

お母さんはそう言いました。

私は涙が止まらなかった。

ただただ自分のことを考えて、わがままにやって来たことをすごく後悔しました。

何でちゃんと相談して説得しなかったんだろう。

自分を責めました。

学校を休んで帰ろうと考えていた時、お父さんからメールが来ました。

「自分で決めたことを途中で投げ出さないこと!!お父さんは反対したけど、お前が決めたことなら見守りたいと思います!!だから頑張れ!!!!」

お父さんがそんな風に私のことを見守ってくれているとは思わなかったので、すごくすごくすごく嬉しくて、涙が止まりませんでした。

「お父さんありがとう。頑張るからね。だからお父さんも頑張って!!夏休みにそっち帰るからデートしようね!!」

そう返信しました。

手術は無事成功し、夏休みには楽しいデートをしました。

ですが夏休みが終わり学校生活に戻ると、お父さんの体調はみるみる悪くなって行きました。

お母さんは担当医に、

「長く見てもあと半年」「咽頭癌は大腸と横隔膜に転移していて、これから全身に癌が転移して行く」

そう言われたと、泣きながら電話をして来ました。

お父さんもそれを知った上で抗癌剤治療を続け、入退院を繰り返していました。

私はお父さんとの約束で、途中で投げ出さず最後まで学校に通い、無事就職も出来ました。

元気な時には毎日、電話やメールをしていました。

しかし私が大学を卒業する頃には、薬の影響で意識が朦朧とするようになり、薬が切れると体が痛いと言うようになりました。

だんだん話も出来なくなって来たお父さん。

意識がある時、お父さんは口うるさく、

「早く結婚しなさい。お父さんが品定めしたるから、彼氏を連れて来なさい。お父さんよりいい男を選びなさい」

そう言ってたね。

半年と言われた余命を軽々と超え、担当医からは

「こんな例は珍しい。お父さんをそこまで励ましているのは娘さんかな?」

そう言われました。

でも、少しずつ意識が戻る回数も減り、痛いとかマッサージとかも言わなくなりました。

ボーッと半目を開け、天井を見上げているだけの目。

口を開け苦しそうにする息。

痩せ細り、あばら骨や骨盤がくっきりと分かるようになった体。

そんなお父さんを見ていることが辛くなり、病室から何度も出ては泣き、また病室へ戻り、手を握ったり腕をさすって筋肉に刺激を与え続けました。

ですが…。

1月8日、お父さんは私やお母さん、沢山の親戚に看取られながら亡くなりました。

葬儀にはお父さんの友人や職場の方など百人以上の方々が来てくださいました。

お母さんは葬儀で、

「主人は人徳のある人」

そう言いました。

今回の葬儀で、私はそれをすごく感じました。

そんな私ですが…。

今度、結婚することになりました。

お父さんに紹介したあの人だよ。

お父さんよりいい男かは分かんないけど、お父さんみたいにすごく大好きな人なんだ。

お父さんみたいに仕事熱心で、お父さんみたいに優しい人だよ。

お父さんと一緒に歩きたかったバージンロードは歩けないし、一緒に結婚は出来ないけど…。

お母さんの隣で号泣してくれているかな?

喜んでくれているかな?

空から見る私はどう見えているかな?

それとも、すぐ近くに居て見守ってくれているのかな?

お父さん、本当に本当にありがとう。

お父さんのことが大好きだよ。

またいつか絶対会えるよね。

その時はちゃんと言うからね。

「ごめんなさい。

わがままでごめんなさい。

勝手に決めてごめんなさい。

ありがとう。

お母さんと結婚してくれてありがとう。

見守ってくれてありがとう」

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