ある日、子供が外に遊びに行こうと玄関の戸を開けた。
その途端、まるで見計らっていたかのように、猫は外に飛び出して行ってしまいました。
そして探して見つけ出した時には、あの子は変わり果てた姿になってしまった。
私はバスタオルにあの子をくるみ、その場で泣き崩れてしまいました。
自転車で通り過ぎる人、横を走る車、みんなが止まり
「どうしたの? 大丈夫?」
と声を掛けて来てくれた。
しかしその声にも答えられず、私は声を上げてあの子を抱きかかえて泣いた。
まだ体が温かかったことが、悔しかった。
※
毎朝、あの子は決まった時間にパパを起こし、餌をねだるのが日課であった。
パパは眠い目をこすりながらも、おねだりするあの子に餌をあげてから朝の一服をする。
あの子が死んだ次の日の朝、パパはいつもの時間に起きて来た。
そして、ソファーに座り煙草に火を点けた。今日は足にまとわり付いて来るあの子が居ない。
パパの背中が寂しそうで、また涙が込み上げた。
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あの子はいつも長男と一緒に二階へ上がり、長男のベットで一緒に寝ていた。
あの子が死んだ時は呆然としていた長男が、夜にベットで泣いていた。
私は声を掛けてあげることが出来なかった。
親として、悲しんでいる子供を慰めてあげなければいけなかった。
でもその長男の姿を見た私は、その場でうずくまって声を殺して泣き崩れてしまった。
※
食事の用意をしていても、掃除をしていても、涙が勝手に溢れて来る。
泣いている私に息子は、
「次はどこ掃除する? 手伝うよ」
と優しく声を掛けてくれた。
「ママが隊長で、僕は副隊長になって掃除しようっ!」
泣きっ放しで不細工になっている私は、
「隊長ばっかで部下がいないじゃん」
と、ぐしゃぐしゃの顔で笑った。
あの子が死んでから初めて笑った。
※
くよくよしていたらいけないことを、息子が教えてくれたようで情けなかった。
今日で、もう泣くのは終わりにしよう。
あの子との沢山の思い出を胸に仕舞い、今日からいつものママに戻るからね♪