中学3年生の頃、母が死んだ。
俺が殺したも同然だった…。
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あの日、俺が楽しみに取ってあったアイスクリームを、母が弟に食べさせてしまった。
学校から帰り冷凍庫を開け、アイスクリームを探したが見つからなかった。
母親に問い詰めると、弟が欲しがったのであげたと言った。
その時、楽しみにしていた俺は凄く怒った。
母親に怒鳴り散らし、最後に「死ね!」と叫び、夕飯も食べずに部屋に篭った。
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それから何時間か経った。
俺は寝てしまっていたが、父親が部屋に飛び込んで来たので目が覚めた。
「母さんが轢かれた…!」
あの時の親父の顔と言葉を、俺は一生忘れないだろう。
俺達が病院に着いた時、母親はどうしようもない状態だと言われた。
医者は「最後に傍にいてあげてください」と言い、部屋を出た。
それから少しして、母親は息を引き取った。
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その後、母親があの時間に外にいた事を父から聞いた。
「買い物に行く」と言って出て行き、その帰りに車に轢かれた事。
現場のビニール袋の中には、アイスクリームが一つだけ入っていた事。
救急車の中でずっと「ごめんね」と呟いていた事。
その時、俺のために母はアイスクリームを買いに行って事故に遭ったと判った。
通夜と葬式の間中、俺はずっと泣いた。
そして、今でもこの時期になると自然に涙が出てくることもある。
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母さん、ごめんよ。
俺が最後に死ねなんて言わなかったらと、今でも悔やみ続けている。