俺は小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。
当初は見知らぬ土地に来てまだ間も無いため、当然友達も居ない。
いつしか俺はノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中になっていた。
それをばあちゃんに見せては、
「ここでモンスターが出るんだよ」「ここに止まったら三回休み~」
と説明していた。
ばあちゃんはニコニコしながら、
「ほうそうかい、そいつはすごいねぇ」
と相槌を打ってくれる。
それが何故か凄く嬉しくて、何冊も何冊も書いていた。
※
やがて俺にも友達が出来、そんな事も忘れて友達と遊びまくっていた。
その頃、家の事情も解消され、自分の家へ戻った。
ばあちゃんは別れる時もニコニコしていて、
「お父さん、お母さんと一緒に暮らせるようになって良かったねぇ」
と喜んでくれた。
※
先日、そのばあちゃんが死んだ。89歳の大往生だった。
遺品を整理していた母から、
「あんたにだよ」
と一冊のノートをもらった。
開いてみると、そこにはばあちゃんが作ったすごろくが書かれていた。
モンスターの絵らしき物が書かれていたり、何故かぬらりひょんなどの妖怪も混ざっていたり。
「ばあちゃん、よく作ったな」
と、ちょっと苦笑していた。
最後のあがりのページを見た。
『あがり』と達筆な字で書かれていた、その下に
『義弘(俺)くんに友達がいっぱいできますように』
人前で、それも親の前で号泣したのはあれが初めてでした。
ばあちゃん、死に目に会えなくてごめんよ。そしてありがとう。