泣ける話や感動の実話、号泣するストーリーまとめ – ラクリマ

またどこかで会おうね

病室(フリー背景素材)

俺は以前、病院勤務をしていた。と言っても看護婦や医者などの有資格者じゃないんだけどね。

それでさ、掃除しようと思ってある病室に入ったんだよ。

よく知らずに入ったらさ、どうやら患者さんがそろそろ…という場面だったんだよ。

『まずい部屋に入っちゃったな』

と思いながら掃除をしていたんだ。

そしたらさ、旦那さんが寂しそうな笑顔で、

「ありがとう」

と言ってくれるんだよ。

家族としての最後の場面を邪魔したような気がして何か居た堪れなくなり、目に見える所だけ掃除して出てしまったんだ。もう逃げるようにな。

それで、部屋から出て廊下を掃除していたら、中から声が聞こえて来るのよ。

掃除途中で出て来ちゃったから、

『何か文句言われてないかな』

なんて思っていたらさ、旦那さんが10歳前後のお子さんに、

「ママにチューしてあげなよ。もう何年もしてないだろ?

最後にもう一回な。

ちゃんと、

『ありがとう』

『心配しないでね』

『またどこかで会おうね』

って声掛けろよ?

泣いてばかりだと、ママも心配しちゃうからな」

そう言って部屋から出て来たんだよ。

でもさ、その旦那は部屋から出た途端に、しゃがみ込んで泣き始めたんだよ。

多分、子供の前では強がっていたんだろうな。

自分が泣いたら子供が余計に辛くなると思ったんだろうな。

旦那が子供に言わせた言葉は、旦那自身が何度も心の中で呟いた言葉なんだろうな。

そう思っていたら、全然知らない患者さんの死がとても身近に感じられて、涙ぐんでしまったよ。

俺も、最愛の人が亡くなる場面に立ち会うことがあったら、

「またどこかで会おうね」

という言葉を掛けたいな。

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