芸人の江頭さんがとある公園でロケをしていると、公園の隣にある病院から抜け出して来ていた車椅子の女の子がそのロケを見ていた。
ロケが終わり、その車椅子の女の子は江頭さんに
「つまらねーの」
と呟いた。
それを耳にした江頭さんは当然、
「お前、もう一度言ってみろ」
と怒鳴った。
すると車椅子の女の子は、
「だって全然面白くないんだもん」
と呟いた。それを聞いた江頭さんは、
「なら、お前が笑うまで毎日ここでネタを見せてやろうか」
と言った。
そして、断言通り毎日仕事の合間にその公園に行っては、車椅子の女の子にネタを見せ続けたのだ。
しかし車椅子の女の子を笑わせるどころか呆れさせていたのは言うまでもない。
※
一ヶ月が過ぎた頃、毎日のように散歩に来ていた車椅子の女の子が突然、来なくなってしまった。
次の日も女の子は姿を現さなかった。
そして一週間が過ぎたある日、女の子がふと現れたのだ。
江頭さんはすかさず駆け寄り、いつものくだらないネタを見せた。
しかし、いつもは全く笑ってくれない女の子が初めて少し笑ってくれた。
江頭さんは調子に乗り、下ネタを連発してやった。
女の子は当然、
「それは最低…」
と一言。
そして日も暮れ、江頭さんが
「また、明日も来るから、ちゃんと待ってろよ」
と言うと、女の子は
「勝手に来れば!!」
と言った。
※
次の日、女の子は公園には訪れなかった。
江頭さんは頭にきて隣の病院へ行き、車椅子の女の子を探した。
担当の看護婦を見つけて事情を尋ねると、女の子の容体が急に悪化して今朝他の病院に運ばれ、昏睡状態だという事を知らされた。
そして、看護婦に女の子の日記を渡された。
そこには『大好きな芸人、江頭』と書かれていた。
十年経った現在でも、月に一度はその公園に来ては花を手向け、一人でネタを披露するそうだ。