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11年後のぼくが伝えたいこと

兄妹

こんにちは。

11年後の君です。

儲け話も、これから出会う誰かの名前も、今は教えません。

代わりに、もっと大事なことだけを渡します。

明日、弟が亡くなります。

高校三年生の夏なのに、くも膜下出血という突然の別れです。

お風呂で、静かに。

これは、今の君には避けられません。

だからせめて、君の手で最初に見つけてあげてください。

母さんを第一発見者にしないでください。

その一瞬の重さから、母さんを守ってください。

そして、言ってあげてください。

「お前は、俺の自慢の弟だ」と。

言葉に出してください。

照れ隠しに笑う癖を、今日はしまってください。

葬儀の日、弟の友達が教えてくれます。

「俺の兄貴、大学生でさ。これから大学院行くんだぜ」って、無邪気に自慢していたことを。

そのとき、君は気づきます。

弟を“バカ”だと心のどこかで見下していたのは、他でもない自分だったと。

本当に“バカ”だったのは、言うべき言葉を飲み込んでいた兄のほうだったと。

明日は、静かに深呼吸してください。

救急車を呼び、状況を伝え、母さんの肩を支えてください。

そして、弟の名前を呼んでください。

届かない場所へ行く前に、声だけは必ず届けてください。

「誇りに思っている」と。

「ありがとう」と。

11年経っても、後悔は薄れません。

それでも、あの日の自分に言葉があれば、未来の痛みは少しだけ軽くなります。

だから、どうか。

避けられない別れなら、せめて伝えてください。

「お前は俺にとって、自慢の弟だ」と。

それが、11年後の君から渡せる、たった一つの手土産です。

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